鎮座地:東京都杉並区善福寺1-33-1
社号標に鳥居
大灯籠に北鳥居
北参道
楼門
境内より楼門を望む
境内
回廊
回廊
扁額
拝殿
拝殿
祓戸神社
三宮神社
御祭神
三谷稲荷神社
三峯神社
相殿
三谷御嶽神社
新町御嶽神社
新町稲荷神社
浅間神社
青梅街道の喧騒を一歩離れると、そこには時がゆるやかに流れる異界が広がっていた。立派な社叢が参道をすっぽりと覆い、真夏でも涼を感じさせるほど。街の喧噪を忘れさせるこの深い緑こそが、長くこの地に息づいてきた神域の息吹なのだろう。
この地にはかつて春日社が祀られていたという。源頼朝が戦勝祈願に訪れた折、干ばつに見舞われ一行は水に困った。頼朝自らが弓で地面を穿ち、七度目にようやく湧き出した清水に「遅野井」と名をつけたという逸話が伝わる。この湧水はやがて善福寺川の源流となり、地名としても残された。以来、この地には八幡宮が奉斎されるようになったそうだ。
参道を進むと、朱塗りの楼門が目を惹く。木漏れ日に映えるその姿は、訪れる者に一瞬の静寂と敬意を促す。楼門をくぐると視界が開け、左右に美しい回廊が広がる。神門の先、回廊に囲まれるようにして鎮座する御社殿は、重厚でありながらもどこか凛とした佇まい。見上げれば屋根の反りに細やかな意匠がほどこされ、長い歳月が培った風格が漂う。
なお、参拝の際には駐車場に注意が必要だ。青梅街道沿いにある北駐車場は現在閉鎖されており、裏手の南駐車場を利用するのが正解。周辺には案内板も少ないため、事前の地図確認をおすすめしたい。
季節の移ろいの中で、静かに歴史と向き合える場所。風が揺らす木々の音に耳を澄ませば、遅野井に湧いた水音が聞こえてくるような気がする――そんな時間が、ここにはある。